何色の商標を登録するべきか
カラーの商標とモノクロの商標の区別
商標法は、カラーの商標とモノクロの商標とを区別していません。つまり、モノクロ商標は、たまたま黒と白の2色しか使用していない商標というだけであり、モノクロ商標とカラー商標との関係は、色違いのカラー商標同士の関係と基本的には同じです。
色違いの商標の類似範囲
色違いの商標に限らず、2つの商標が互いに類似するのか否か、また、同じ類似範囲を有しているのか否かは、商標ごとに個別具体的に判断する必要があり、色違い商標であれば、こうなるという簡単な方程式はありません。しかしながら、一般的な傾向についてご説明すれば、以下の様になります。
一般に、色彩のみを異ならせた商標は、互いに類似する関係にあり、その類似範囲はおおむね重複していると考えられます。例えば、文字のみで構成される商標であれば、このような傾向が強いといえます。
逆に、色彩の重要性の高い商標の場合には、色彩を変更しただけで非類似の商標になるという場合があります。例えば、色彩だけが異なるイタリア国旗とフランス国旗は、商標としては非類似の関係にあるといえるでしょう。また、日の丸や赤十字のマークは、白地に赤色で表示されていない商標と混同されることはなく、これらの商標とは非類似であると考えられます。
単純な図形からなる商標ほど色彩の重要度が高く、また、特定の色彩の占める割合が多いほど、その色彩の重要度が高く、色彩を変更すれば、非類似になる傾向があると考えられます。
何色の商標を登録すべきかに迷ったら
要するに、登録する商標の色彩が異なれば、その類似範囲が変動するのか否か、あるいは、どの程度変動するのかは、ケースバイケースで判断する必要があり、しかも、微妙な判断が必要になります。
このため、カラー商標とモノクロ商標のどちらを登録すべきかを迷った場合、あるいは、何色の商標を登録すべきかを迷った場合であれば、自社が実際に使用し、需要者に覚えてもらいたい商標そのものを登録することをお勧めします。そうすれば、その商標を中心とする類似範囲において他人の使用を排除でき、最も望ましい結果が得られるはずです。もちろん、使用義務違反によって取り消されるリスクもありません。
なお、文字からなる商標で、自社が実際に使用するときの表示色が未だ決まっていないという場合であれば、まずはモノクロの商標として登録しておくのが無難であるといえるでしょう。